令和8年税制改正暗号資産の税務が大きく変わる!分離課税導入でどう変わる?


目次

はじめに

令和7年12月19日、与党は「令和8年度税制改正大綱」を公表しました。この大綱の中で、長年にわたって個人投資家から見直しを求める声が上がっていた暗号資産(仮想通貨)の税制に、ついに大きなメスが入ることになりました。

一言で言えば、「暗号資産取引による所得に、株式・投資信託と同じ約20%の申告分離課税が適用される」という、非常にインパクトの大きな改正です。

本記事では、改正の内容をわかりやすく整理し、投資家が押さえておくべきポイントを解説します。


現行制度の問題点:最高55%という高税率

まず、現行制度のおさらいです。

現在、暗号資産取引で得た利益は「雑所得」として分類され、給与所得などと合算して課税される総合課税の対象となっています。

所得区分課税方式最高税率(住民税含む)
暗号資産(現行)総合課税(雑所得)最高55%
株式・投資信託申告分離課税約20.315%
FX・先物取引申告分離課税約20.315%

この「最高55%」という税率は国際的にも突出して高く、日本の暗号資産市場の発展を妨げているとの批判が長年続いていました。また、損失の翌年繰越が認められていない点も投資家にとって大きな負担でした。


改正の概要:申告分離課税の導入

税率が約20%に引き下げ(特定暗号資産が対象)

令和8年度税制改正大綱では、一定の要件を満たす暗号資産(「特定暗号資産」)の譲渡等から生じた所得について、申告分離課税(税率20.315% を適用することが決定されました。

税率の内訳:

税目税率
所得税15%
個人住民税5%
復興特別所得税0.315%
合計20.315%

これにより、高所得者ほど大きなメリットを受けることになります。例えば、年収が高く現在の課税率が45%(住民税含め55%)の方であれば、税負担が約半分以下になる計算です。

「特定暗号資産」とは何か?

今回の分離課税が適用されるのは、すべての暗号資産ではなく、「特定暗号資産」 に限定される点が重要です。

特定暗号資産とは、「暗号資産取引業(仮称)」を行う者(金融商品取引業者の登録を受けた事業者)が取り扱う暗号資産 のことを指します。

つまり、将来的に金融商品取引法(金商法)の規制下に置かれる正規の事業者を通じた取引のみが対象となるイメージです。これは、投資家保護の観点から、規制された市場での取引を促進するための仕組みといえます。

ポイント: 海外の規制外取引所や、個人間取引(P2P)などは「特定暗号資産」の対象外となる可能性があります。どの取引所・どの銘柄が対象になるかは、今後の金商法改正の内容に依存します。

対象となる取引の種類

分離課税が適用される取引は、現物取引にとどまらず幅広く想定されています。

  • 現物取引(BTC・ETHなどの売却)
  • デリバティブ取引(先物・レバレッジ取引など)
  • 暗号資産ETF(将来的に解禁された場合)

3年間の損失繰越控除制度の創設

今回の改正のもう一つの大きなポイントが、損失の繰越控除制度の創設です。

特定暗号資産の譲渡等によって生じた損失のうち、その年の利益と相殺しきれなかった金額については、翌年以後3年間にわたって特定暗号資産の利益から控除することができるようになります。

イメージ例:

損益繰越控除課税対象
2027年▲100万円の損失0円(損失100万円を繰り越し)
2028年+150万円の利益▲100万円50万円
2029年+80万円の利益80万円

これは株式投資の「損失の3年間繰越控除」と同様の仕組みであり、投資家にとって非常に有利な制度です。


適用開始時期:いつから変わる?

大綱では、適用開始時期を「改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う譲渡等」と規定しています。

この改正は暗号資産取引業に関する金融商品取引法の改正・施行とセットで実施される予定です。現時点では、2028年(令和10年)頃からの適用開始が有力視されています。

スケジュール(予想):

2026年    → 法案の国会審議・成立
2027年    → 金商法改正の施行
2028年1月 → 申告分離課税・損失繰越控除の適用開始


制度移行時の注意点

新制度への移行にあたっては、いくつか注意すべき点があります。

移行前の含み損は持ち越せない

分離課税が導入される前(現行制度下)に確定した損失や、移行時点で抱えている含み損は、新制度に持ち越すことができません

つまり、現行制度下で含み損がある方は、新制度の恩恵(3年間繰越控除)を受けるために今すぐ損失を確定させても意味がなく、あくまで新制度施行後に新たに発生した損失のみが繰越控除の対象となります。

「特定」に該当しない銘柄・取引は従来通り

繰り返しになりますが、今回の優遇措置はあくまで「特定暗号資産」が対象です。規制を受けない業者を通じた取引や、特定の要件を満たさない銘柄は、引き続き総合課税(雑所得)の対象になる可能性があります。利用している取引所・銘柄が対象かどうかを、施行時に必ず確認しましょう。

他の金融所得との損益通算

株式・FXなどとの損益通算については、現時点では対象外とされる可能性が高いです。暗号資産の損益は「暗号資産同士」の間でのみ通算・繰り越しができる形になる見込みです。


まとめ:今後の対応は?

令和8年度税制改正大綱による暗号資産の税制改正を整理すると、以下の3点が核心です。

  1. 申告分離課税(約20.315%)の導入 — 高所得者ほど税負担が大幅に軽減
  2. 損失の3年間繰越控除制度の創設 — 株式と同等の投資環境に
  3. 対象は「特定暗号資産」のみ — 金商法上の規制を受けた業者・銘柄が条件

適用開始はまだ先(2027〜2028年見込み)ですが、投資戦略への影響は大きいため、今から制度変更を見据えた準備をしておくことが重要です。特に、含み損の取り扱いどの取引所・銘柄が対象になるかについては、今後の法改正の動向を注視してください。


免責事項: 本記事は令和7年12月19日公表の「令和8年度税制改正大綱」をもとに作成した情報提供を目的とするものです。実際の税務判断については、税理士等の専門家にご相談ください。法案の国会審議の結果、内容が変更される可能性があります。

目次