インボイス制度の特例の見直しについて

~「3割特例」と仕入税額控除の経過措置~

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入に伴い、小規模事業者の負担を軽減するため、いくつかの特例措置が設けられています。
今回の税制改正では、そのうち

  • 小規模事業者向けの「2割特例」
  • 仕入税額控除の経過措置

について見直しが行われました。

本記事では、これまでの制度の概要と改正内容について整理します。

1 インボイス制度の2割特例と仕入税額控除の経過措置の概要

(1)2割特例とは

インボイス制度開始に伴い、免税事業者から適格請求書発行事業者となった小規模事業者の負担を軽減するため、「2割特例」 が設けられました。

この制度では、実際の仕入税額を計算しなくても、次の方法で納税額を計算できます。

納税額 = 売上に係る消費税額 × 20%

つまり、売上消費税額の 80%を仕入税額控除として認める制度です。

(2)仕入税額控除の経過措置

インボイス制度では、原則として
適格請求書(インボイス)がなければ仕入税額控除は認められません。

しかし制度開始直後は、免税事業者との取引への配慮として
一定期間はインボイスがなくても仕入税額控除が認められる経過措置が設けられています。

現行制度では次のような割合となっていました。

期間控除割合
2023年10月~2026年9月仕入税額相当額の80%   
2026年10月~2029年9月仕入税額相当額の50%

(3)今回の見直しの趣旨

これらの特例は、インボイス制度導入時の急激な負担増を緩和するための暫定措置として設けられました。

今回の改正では、制度の定着を踏まえ、以下の改正が行われます。

  • 特例措置の内容の見直し
  • 控除割合の段階的な縮小

2 「3割特例」について

今回の改正では、2割特例が見直され、個人事業主に限り「3割特例」 が設けられます。

(1)期間

2026年10月以降の課税期間から適用されます。

個人事業主は、2027年(令和9年)分と2028年(令和10年)分の確定申告において「3割特例」が適用できます。

2026年9月30日を含む2026年(利和8年)分の申告まで、現在の2割特例が適用されます。

(2)対象事業者

3割特例の対象は次の事業者とされています。

  • 個人事業主
  • インボイス制度開始を契機として課税事業者となった小規模事業者

一方で法人は対象外となります。

令和8年9月30日を含む課税期間が、2割特例を適用できる最後の課税期間となります。

(3)特例の内容

3割特例では、納税額は次の方法で計算します。

納税額 = 売上に係る消費税額 × 30%

つまり、売上消費税額の 70%を仕入税額控除とみなす制度です。

(4)これまでの制度との違い

項目2割特例(現行)3割特例(改正後)
納税額売上税額×20%売上税額×30%
控除割合80%70%
対象個人事業主・法人個人事業主限定
適用期間~2026年9月2026年10月以降

3 仕入税額控除の経過措置について

今回の改正では、仕入税額控除の経過措置についても見直しがされました。当初は2029年9月で終了する予定でしたが、2031年9月まで適用期間が延長され、控除割合の引き下げについても緩和されました。

(1)控除割合のスケジュール

改正後は、控除割合が次のように段階的に引き下げられる予定です。

期間控除割合
2023年10月~2026年9月仕入税額相当額の80%
2026年10月~2028年9月仕入税額相当額の70%
2028年10月~2030年9月仕入税額相当額の50%
2030年10月~2031年9月仕入税額相当額の30%

従来の制度では 2026年10月から80%→50% と大きく下がる仕組みでしたが、
改正後は 70%を挟む形で段階的に縮小されます。

(2)適用にあたっての注意点

この経過措置は、免税事業者からの仕入れなど、インボイスが発行されない取引に適用されるものです。

そのため

  • 区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書の保存が必要
  • 経過措置を適用する旨の帳簿への記載
  • 取引先が適格請求書発行事業者か免税事業者かの把握が必要
  • 一の免税事業者からの課税仕入れの年間合計額が税込1億円を超える部分については、経過措置の適用不可(改正前により10億円から引き下げられました)

など、適用のための要件が設けられています。

まとめ

今回の改正では、インボイス制度の特例について次の見直しが予定されています。

  • 2割特例 → 3割特例への変更
  • 対象は 個人事業主(法人は対象外)
  • 仕入税額控除の経過措置は 70%控除を経て段階的に縮小

インボイス制度は今後も段階的な制度調整が予定されており、事業者の状況によっては税負担に影響が出る可能性があります。

制度の適用方法については、早めに確認しておくことが重要です。

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